昨年6月初旬頃だと思いますが、この展覧会は最初平田と中根の二人展ということで話を頂いていたのです。常日頃から二人で「空想の展覧会」ごっこ(妄想みたいなものですが)をやっていたのですが、おそらく「今」こそがその「空想の展覧会」を実行に移す時だと腹を括り1ヶ月で企画書を完成、三人の作家にアプローチを開始しました。一人は1994年に30歳の若さで亡くなった中根の先輩、小林潔史さんなのですが。もちろん実際にコンタクトを取ったのは弟の篤史さんです。
ご遺族である篤史さんにとっては、ある意味で「兄貴」の作品に対して責任を抱えることになりますので、初めはかなり戸惑われたことと思います。8月末に最初の顔合わせをし、大森にあるお墓まをお参りしてきました。小林潔史さんの作品は、ワックスで作られた約3センチの球体上の世界をブロンズ鋳造したもので、作品は大学院在学中の1989年から94年9月までの5年間ほぼ毎日休みなく制作されています(5878個という驚異的な数になります)。弟さんが持って来てくださったのは綺麗な箱に納められた作品48点で、これらはご家族に関わりがあるものだと記憶しています。制作時期によって表面加工にバリエーションがあります。これらひとつひとつが日々の記録であり記憶であり、それぞれの作品に制作年月日とタイトルが付いています。
ところで、私が留学先のロンドンに旅立つ前日、小林さんが成田のホテルに電話をかけてきてくださったことがあるのです。なんだかいつものように訳のわからない(笑)暖かい励ましの言葉をかけてくださったことをよく憶えています。今回、昔のパスポートからその日が1993年の9月3日のことであるのがわかり、そしてリストを繰ってみると、あったのです!!
1993.9.3 No.5746 白いカガミの中に映る顔
少し写真では分かりづらいのですが、手前に見えるのが飛行機ですね…。
今回の展示では小林潔史さんの若すぎる晩年、1993年4月から94年9月までの作品のうち29点を展示します。2003年の追悼・回顧展以来、実に12年ぶりの公開です。できれば若い人たちにも、「今」、小林さんの仕事を見て欲しいと思っています。エステティック・ライフ – オートマチック展をどうぞ宜しくお願いします。