第1回展2010年

エステティック/ ライフ -Aesthetic Life-

第1回 中根秀夫・平田星司 展
テキスト再録 2010年3月15日から3月28日 @トキ・アートスペース


過去は現在を決定する。その衝撃をよく考えてみるべきなのだ。これは単に形式的なことでなく、個人的な経験からなのだ。私が年をとり、過去の出来事から遠く隔たったのに、過去それ自身が迫ってくる(ノスタルジアとかそんなものではなく!)。すでに歴史の中に葬られてしまったであろう私の若かった頃の出来事が、まるで今起ったかのようなのだ。時間と歴史はもうリニアな経験ではすまない… ギャラリー内には7人のアーティスト(まだ生きていようと既に死んでいようと)がいる。今、彼らの作品は調和している – そんな準備がこの単色の空間にはできている… ここには全て静寂が与えられている。たぶんそれはあなたが選んだ作品のそれぞれが、内省的だからである – つまり単なる物語的な意味以上のことを考えてくれるよう促しているのだ。

 

1990年代中頃のイギリスはブレア政権誕生前の経済が低迷するさなか。一方、美術といえばDamien HirstやRachel Whiteread、Anya Gallaccioらに代表される若手アーティスト が、社会に対する批評性の強い作品を繰り広げる。そんな96年、ロンドンのShowroomギャラリーで『The pleasure of aesthetic life』という展覧会が開催されました。 前述のAnya Gallaccio他、 Douglas Gibb、Denise Hawrysio、Georges Perec、 Daniel Spoerri,、Gera Urkom & John Wilkinsという6組7名のアーティストの展覧会で、その企画をしたのが平田のブライトン大学時代の師でもある Amikam Toren氏(1945年エルサレム生まれ)です。

Toren氏の言葉のとおり過去は現在を決定します。私たちは帰国後 10 余年を経て、日本に於ける美術の現状に対し確固たる提案をするべき時が来ていると考えているのです。英国での生活を通して体感した「美術」あるいは「美」というものに関する本質的な何か/エステティックを作品にして取り交わしてみせること。この展覧会を今なおイギリスの第一線で活躍されるToren氏に捧げるとともに、私たちの展示をご覧になる多くの方々が、エステティック/ ライフを共有されることを願っております。

2010年3月

 

展示風景


Kinderszenen 2001年
Hideo Nakane

 

Patrona 2010年  Ezoo 2010年
Seiji Hirata

Still Life 2007年 Unresting Skin 2001 / 2010年
Seiji Hirata

 





Kinderszenen 2001 Hideo Nakane

 





Kami no Ie 2003 / 2010 Seiji Hirata

 

 

参考作品

トーレン氏が90年代から制作を続けている「アームチェア・ペインティング」というシリーズで、マーケットなどで売られている日曜画家の描いた絵画を購入し、文字をカット・アウトして「作品」としている。

Amikam Toren
The pleasure of aesthetics life