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カメラ・ルシーダ - Camera Lucida

われわれはかつて一度も、一日も、
ひらきゆく花々をひろく迎え取る
純粋な空間に向きあったことがない。
われわれが向きあっているのは
いつも世界だ。 -リルケ

 

そこで私は、自分の探究の出発点として、わずか数枚の写真、私にとって存在することが確実な数枚の写真を採用することに決めた。それは資料体(コルプス)とは何の関係もない、ただいくつかの肉体(コール)にすぎなかった。 -ロラン・バルト

荷物を整理しているとき、クローゼットの奥に古い一眼レフを見つけた。ずっしりとした重さと金属の感触が少し嬉しく、巻き上げてシャッターを切る。2、3回繰り返したところで不穏な引っ掛かりがあり、それきりカメラは動かなくなった。ただの金属の塊と化したそのカメラを手にして、私は個人的でとりとめもないいくつかの「風景」を思い出していた。正確に言うと、それは私の中で写真のノエマとして定着された「風景」であり、そのイメージ自体を脳裏に浮かべたのかもしれないとも思った。ロラン・バルトのいう≪それは=かつて=あった≫。

 

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Camera Lucida
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