hideonakane / Works

Japanese / English

第3回 寿限無 展

kinderszenen

 

「子供」とは近代以降の「制度」が作り出した概念である。現実の大人の世界から「子供」を切り離し、抽象的な概念に押し込める事、これが教育という「制度」にほかならない。「子供」とは、大人の作った「制度」の中にのみ存在する美しく彩られた虚像であり、大人が「子供らしい」という言葉の中に押し込める欺瞞である。

大人の世界が透けて見える年代に達したときの「あの」気持ちは、自分たちが、大人の作り出した空虚な世界に住む存在にすぎないと、初めて気づくことに由来する。他人を傷つけることも、自分を傷つけることも、自分という虚像を壊して、自分が自分であるという身体的感覚を取り戻そうとする行為なのである。

80年代以降、「子供たちの混乱」を境に推し進められた「ゆとりの教育」が、結局、実を結ばなかったのは、私たちが、教育についてその内容ばかりを議論の対象にし、「制度」そのものに疑いの目を向けることを怠ったからである。

 

追記

  1. 寿限無展は、富士ゼロックスの ART BY XEROX の企画する「複製」をテーマとした展覧会である。
  2. 現代において「複製」が孕む一番危険な要素は、オリジナルの所在を無視して、「複製」自らが複製を繰り返すことにある。「制度」という、責任のあいまいな装置が作り出す「複製」は、まさにその典型であり、「制度」の存在を自明のものと考えることこそが大きな落とし穴となる。なお、義務教育という「制度」については、柄谷行人が『児童の発見』(群像1980年新年号)のなかで指摘している。今から18年も昔の話である。
  3. この作品は事件とも呼ばれない日常の出来事を形にしたものである。

page top⏫