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Japanese

通信制高校美術報告課題集

中根 秀夫

1997年に通信制高校の講師を前任者から引き継いではや20年。当通信制高校のシステムは、各科目ごと年に10回の授業と自習形式のスクーリング、およびレポート(美術の場合は制作課題)6通と、全日制の生徒と比べれば非常に短い時間で学習が進められます。高校卒業を断念した生徒(経済的な理由や健康上の理由、予期せぬ個人的事情などもある)が年月を経て再チャレンジすることも多いが、ここ10年ほどの傾向としては不登校の生徒の受け皿として、いわば教育の最後の砦という部分もあります。いじめや家庭の事情で精神的に追いつめられている生徒も少なからずいるのが現状です。

 生徒の作品とは不思議なもので、良きにつけ悪しきにつけ、その人の抱えている「何か」が見えてしまうことがあります。特に通信制のようにレポート課題を通じてひとりひとりの生徒と作品のやりとりをしていると、その「何か」と向き合うことになります。それが実際のところ「何」であるかを、こちらから問うことはありません。そんなことをすれば生徒は簡単にそのやりとりから逃げていってしまうでしょう。彼らは自分に自信をなくしていたり、逆に自分のプライドを傷つけないために自己防衛的な独りよがりが強かったりもします。

 私ができることは、ただ生徒が画面の上に残した色や形を「美術の言葉」に載せて返すこと、例えば「この赤い色は奇麗ですね」と書くことで、彼らの無意識の行為自体に眼を向けさせることにすぎません。「この赤い色は奇麗なんだ」と自信を持って感じることは、彼らにとって、もしかしたら「普通」の人にとっても?、想像以上に難しいことなのです。やりとりのチャンスはレポート6通分、つまり6回。慌てずに彼らの作品を見守っていくなかで、固くなった心を少しでも解きほぐすことができれば幸いです。それは「美術」の仕事でもあると今でも思っているのです。

追記 2015年度より美術1、2とも新学習指導要領用に改定しています。

 

2021 new 課題集『高校美術1』  ▽ pdf (2.9MB)
2021 new 課題集『高校美術2』  ▽ pdf (2.5MB)
2021 new 課題集『絵画』鉛筆デッサン基礎  ▽ pdf (3.8MB)

 

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