エステティック / ライフ - Aesthtic Life-
1990 年代中頃のイギリスはブレア政権誕生前の経済が低迷するさなか。一方、美術といえばDamien HirstやRachel Whiteread、Anya Gallaccioらに代表される若手アーティスト が、社会に対する批評性の強い作品を繰り広げる。そんな96年、ロンドンのShowroomギャラリーで『The pleasure of aesthetic life』という展覧会が開催されました。 前述のAnya Gallaccio他、 Douglas Gibb, Denise Hawrysio, Georges Perec, Daniel Spoerri, Gera Urkom & John Wilkinsという6組7名のアーティストの展覧会で、その企画をしたのが平田のブライトン大学時代の師でもある Amikam Toren氏(1945年エルサレム生まれ)です。
The pleasure of aesthetic life.このaestheticというのは日本語に訳すのが困難な言葉のひとつです。aesthetic という英語の語感と、例えば「美の」「美学の」などの日本語のそれとの間に、微妙な感覚的差異が生じてしまうから。その差異を踏まえ、私たち二人はこの翻訳不能なエステティックな日常に悦びを持つことこそが「美術」の本質であり、あるいは逆に、「その美術」こそが私たちの疲弊した日常を救済するほとんど唯一の手段であると信じているのです。
Toren氏の言葉のとおり過去は現在を決定します。私たちは帰国後 10 余年を経て、日本に於ける美術の現状に対し確固たる提案をするべき時が来ていると考えているのです。英国での生活を通して体感した「美術」あるいは「美」というものに関する本質的な何か/エステティックを作品にして取り交わしてみせること。
この展覧会を今なおイギリスの第一線で活躍されるToren氏に捧げるとともに、私たちの展示をご覧になる多くの方々が、エステティック / ライフを共有されることを願っております。
2010年3月
なかねひでお/ひらたせいじ